今回の題材
出典先:彰化Zhānghuà「林醫師」10年不間斷騎車巡迴看診 突遭檢警逮捕真相驚呆眾人より |
出典先:彰化Zhānghuà「林醫師」10年不間斷騎車巡迴看診 突遭檢警逮捕真相驚呆眾人へのリンクはここから
<解説>
なんだか、日本では不毛を思わせる事件続きの昨今ですが、ちょっと日本ではあり得ないような、まるでマンガやコメディドラマを思わせる「ホントの事件」のご紹介です。
彰化県というのは、台中市と雲林県の間にある農村地帯で、海沿いにある鹿港(ルゥグァン)という街は台湾でも一二を争う規模の媽祖廟が有名ですが、大都市である台中の郊外の農村地域はどこまで行ってものどかな田園風景が広がっています。
今回、ニセ医者の「林医師」は、この地域を巡回診療して回っていたのですが、このエリアは住んでいる人たちも農村部の人が良くやさしい人たちが多いため、なんの問題にもならずに10年もニセ医者商売ができたばかりか、農村部の人たちからは尊敬され、謝礼金までもらっていたというのは、南方アジア世界の雰囲気が伝わってくるような記事ですね・・・。
この林被告、刑務所送りとなった後も懲りずにまたニセ医者稼業を再開、結局また捕まって・・・ですが、なんと診療を受けた「被害者」たちの方から、情状酌量と減刑を求める声が上がり、法院もそれに応じた、というあたり、日本ではありえないような話です。
現代日本ならば大バッシングされ、こういう事件を起こせば社会的にも抹殺されてしまうでしょう・・・。
でも、人間が生きていく上ではこういう適度な緩さを持っている社会の方がいいのかもしれません。
大昔の日本映画をみていると、これに近い感覚が描かれているのに気づくことがあります。
現代日本は、いつの間にやら少しでもなにか非がある人がいたら、こぞって非難して袋叩きにするような風潮が強くなっていますけれど、昭和40年代、50年代くらいまでは私の記憶ではそうではなかったようにも思えます。
台湾に限らず、南方アジアは今もこの記事のような緩さを残していますが、こうした緩さがなければ人口も増えはしないのではないか?と思わずにはおれません。
そういう緩さに触れるのは、自分たちの住んでいる世界を考えるうえでも意味あることだと思います。
だからこそ、文化や社会の空気が全く異なる南方のアジア世界を旅してくるのはいいのかもしれませんね。
こんな記事を見ると、なんだかほっとします。
<大意訳 全文>
(タイトル)
◎彰化の「林医師」10年間休まずスクーターで巡回診察、突然、警察の取り調べで逮捕され、人々は真相に唖然
彰化県では「林医師」を自称する男が、2013年より自分は家庭医学科を卒業していると称してスクーターに沢山の薬品を載せて村々を往診してまわり、一回につき100元から5000元の診察費を受け取っていた。患者の中には彼は根気よく患者に接し、医療技術もなかなかで、彼の薬を飲んで病状が良くなったとのことで謝礼金を渡す人さえおり、その評判はあっという間に広まった。ところが思いもよらぬことに、林を名乗る男はなんとニセ医者で、職業訓練高校の学歴しかない彼は、2019年に検挙され刑務所行きとなった。ようやく出所した数日後に彼はすぐに往診に復帰した。しかし今年の7月にまたも取り調べを受け逮捕され、彰化地方検察署は「医師法」違反などの罪により林を起訴、彼は法院で9カ月の実刑判決を受けた。
検察は次のように公表している。61歳の林は、医療になみなみならぬ関心を持っていたため、以前北部の個人開業医のところで技術スタッフの仕事をし、正規の医師から薬理の知識を習得した。2013年ころ、彼は一枚の「家庭医学専門医」のコピーを使い、「林医師」の偽名で、社頭鄉、田尾鄉そして永靖鄉などの地域でスクーターに薬を積み込み、いたるところを往診して回り始めた。風邪から、高血圧、心臓病など大小さまざまな難病が疑われる症状を治療、挙句の果てには患者の「血行を良くする」治療まで行い、毎回の料金としては健康保険での医療費ととほぼ同じ100元から5000元を受領していた。評判はかなりのものだった。
しかし2019年、彼のニセ医者行為は検挙され明るみになった。彼はこともあろうに同居していた女の離婚した夫の名前を盗用し、衛生局スタッフや検察官、法務局員を欺いていたが、検察が彼の財産を差し押さえる段階になった時、彼は憤慨してもはや本名で抗告せざるをえなかった。台中地方法院は「医師法」違反と公文書偽造などの罪で、彼に1年5カ月の実刑判決を下すとともに600万元の不法所得を没収した。
その後林を名乗る男は約2年前の元旦に刑期を終えて出所したが、数日後にはまたも以前の商売を再開、100元から3000元とまちまちの料金で患者の往診を開始した。自分の技術をアピールするため、彼はさらに既に廃業した産婦人科医院から自分に必要な医療器材や薬品を運び出した。しかし警察の取り調べで、林を名乗る男が使用した薬品はその多くが期限切れのもので、一番ひどいものは13年も期限を過ぎており、人々に安全面で問題のあるものを服用させていたことが判明した。
彰化地方法院の審理をたどると、裁判官は次のような判決を下している。林を名乗る男は期限の切れた薬品を使用し、病気の患者の健康にとって安全な薬を用いていたか、という点においてはかなりの危害を与えたといえる。しかし彼に治療を受けた4名の患者が彼のために情状酌量を求めており、「林医師の出してくれた薬は確かによく効いて、問題があった症状もとても良くなったのです」と述べている。林を名乗る男はまたこの人たちから許しを得ている。よって減刑はするが、しかし彼は再犯であるので法院は引き続き「医師法」違反により9カ月の実刑判決を下し、犯罪による所得19300元を没収するものとする、と。
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原文引用・語彙注釈・大意訳
今回の出典先:台湾Yahoo!:李育材
2023年12月12日 週二 上午10:26
セクション1
◎彰化Zhānghuà「林醫師」10年不間斷騎車巡迴看診 突遭檢警逮捕真相驚呆眾人
彰化一名自稱「林醫師」的男子,自2013年起聲稱自己擁有家庭醫學科背景,騎機車載著大量藥物,在鄉間巡迴看診,每次收費100至5,000元,有病患覺得他為人有耐心、醫術也不錯,吃他開的藥痊癒後還包紅包給他,名號不脛而走。沒想到,林男竟是密醫,僅有高職學歷的他,2019年被檢舉入獄,結果出獄隔天旋即恢復看診,但今年7月間又被查獲,彰化地檢署依違反《醫師法》等罪對林男提起公訴,他也被法院判刑9個月。
<語彙注釈>
自稱Zìchēng=自称する 逮捕Dàibǔ=逮捕 驚呆Jīng dāi=唖然とさせる 病患Bìng huàn=病気の患者 痊癒Quányù=回復する 不脛而走Bù jìng ér zǒu=またたく間に広がる 密醫Mì yī=偽の医者 高職Gāo zhí=職業教育高校 入獄Rùyù=刑務所に入る 提起公訴Tíqǐ gōngsù=起訴する 判刑Pànxíng=求刑する
<大意訳>
(タイトル)
◎彰化の「林医師」10年間休まずスクーターで巡回診察、突然、警察の取り調べで逮捕され、人々は真相に唖然
彰化県では「林医師」を自称する男が、2013年より自分は家庭医学科を卒業していると称してスクーターに沢山の薬品を載せて村々を往診してまわり、一回につき100元から5000元の診察費を受け取っていた。患者の中には彼は根気よく患者に接し、医療技術もなかなかで、彼の薬を飲んで病状が良くなったとのことで謝礼金を渡す人さえおり、その評判はあっという間に広まった。ところが思いもよらぬことに、林を名乗る男はなんとニセ医者で、職業訓練高校の学歴しかない彼は、2019年に検挙され刑務所行きとなった。ようやく出所した数日後に彼はすぐに往診に復帰した。しかし今年の7月にまたも取り調べを受け逮捕され、彰化地方検察署は「医師法」違反などの罪により林を起訴、彼は法院で9カ月の実刑判決を受けた。
セクション2
檢警指出,61歲的林男因對醫療有極高興趣,曾到北部的私人醫院做技術人員,向正牌醫師習得藥理知識。2013年間,他使用一張「家庭醫學專科醫師證書」的影本,化名「林醫師」,開始在社頭鄉Shètóu xiāng、田尾鄉Tiánwěi xiāng與永靖鄉Yǒng jìng xiāng等地,以機車載著藥品,到處巡迴看診。從感冒、高血壓、心臟病等大小疑難雜症,甚至還幫病患「通血路」,每次收費近似於健保費用的100元至5,000元,迴響相當不錯。
<語彙注釈>
疑難雜症Yínán zá zhèng=難病の疑いがある症状 近似於Jìnsì yú=近い
<大意訳>
検察は次のように公表している。61歳の林は、医療になみなみならぬ関心を持っていたため、以前北部の個人開業医のところで技術スタッフの仕事をし、正規の医師から薬理の知識を習得した。2013年ころ、彼は一枚の「家庭医学専門医」のコピーを使い、「林医師」の偽名で、社頭鄉、田尾鄉そして永靖鄉などの地域でスクーターに薬を積み込み、いたるところを往診して回り始めた。風邪から、高血圧、心臓病など大小さまざまな難病が疑われる症状を治療、挙句の果てには患者の「血行を良くする」治療まで行い、毎回の料金としては健康保険での医療費ととほぼ同じ100元から5000元を受領していた。評判はかなりのものだった。
セクション3
但2019年時,他的密醫行徑遭人檢舉拆穿,他竟盜用盜用同居人前夫之名,欺瞞衛生局人員、檢警與法官,不過當檢警查扣他的財產時,他一時氣憤,只好以本名抗告。台中高分院依違反《醫師法》與偽造文書等罪嫌,將他判刑1年5個月,並沒收600萬元不法所得。
<語彙注釈>
行徑Xíngjìng=行動 拆穿Chāichuān=明るみに出る 欺瞞Qīmán=あざむく 查扣Chá kòu=差し押さえる 氣憤Qìfèn=激高する 抗告Kànggào=抗議する 高分院=高等地方裁判所 罪嫌Zuì xián=疑い 沒收Mòshōu=没収する
<大意訳>
しかし2019年、彼のニセ医者行為は検挙され明るみになった。彼はこともあろうに同居していた女の離婚した夫の名前を盗用し、衛生局スタッフや検察官、法務局員を欺いていたが、検察が彼の財産を差し押さえる段階になった時、彼は憤慨してもはや本名で抗告せざるをえなかった。台中地方法院は「医師法」違反と公文書偽造などの罪で、彼に1年5カ月の実刑判決を下すとともに600万元の不法所得を没収した。
セクション4
結果林男2年前的元旦出獄後,隔日又開始從操舊業,以100元至3,000元不等的價格開始對病患看診,為了強調自己的技術,他還到一家已經歇業的婦產科診所,搬來自己所需的醫療器材和藥品。但檢警發現,林男使用的藥物大多已經過期,最多高達13年,給民眾服用恐有安全問題。
<語彙注釈>
從操舊業Cóng cāo jiùyè=昔の商売に戻る 歇業Xiēyè=廃業する
<大意訳>
その後林を名乗る男は約2年前の元旦に刑期を終えて出所したが、数日後にはまたも以前の商売を再開、100元から3000元とまちまちの料金で患者の往診を開始した。自分の技術をアピールするため、彼はさらに既に廃業した産婦人科医院から自分に必要な医療器材や薬品を運び出した。しかし警察の取り調べで、林を名乗る男が使用した薬品はその多くが期限切れのもので、一番ひどいものは13年も期限を過ぎており、人々に安全面で問題のあるものを服用させていたことが判明した。
セクション5
案經彰化地方法院審理,法官認為,雖然林男使用過期藥品,對病患的身體健康、用藥安全產生相當程度的危害,但被他治療過的4名患者替他求情,表示:「吃了林醫師開的藥確實有效,相關症狀也緩解。」林男也取得他們的原諒,獲得減刑,但他是累犯,法院仍依違反《醫師法》判處9個月的有期徒刑,沒收犯罪所得19,300元。
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<語彙注釈>
案經Àn jīng=経緯を見ると 危害Wéihài=危害 替他求情Tì tā qiúqíng=彼のために情状酌量を求める 緩解Huǎnjiě=緩和させた 原諒Yuánliàng=許し 累犯Lěifàn=再犯 判處Pànchǔ=判決 有期徒刑Yǒu qí túxíng=実刑 模仿Mófǎng=真似する
<大意訳>
彰化地方法院の審理をたどると、裁判官は次のような判決を下している。林を名乗る男は期限の切れた薬品を使用し、病気の患者の健康にとって安全な薬を用いていたか、という点においてはかなりの危害を与えたといえる。しかし彼に治療を受けた4名の患者が彼のために情状酌量を求めており、「林医師の出してくれた薬は確かによく効いて、問題があった症状もとても良くなったのです」と述べている。林を名乗る男はまたこの人たちから許しを得ている。よって減刑はするが、しかし彼は再犯であるので法院は引き続き「医師法」違反により9カ月の実刑判決を下し、犯罪による所得19300元を没収するものとする、と。
★「鏡週刊」より皆様へ:良くない行いは、マネをしないでください。
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