総統選の野党統一候補をめぐる協議は決裂、郭、柯、侯の三人は各自が立候補する展開に

 今回の題材記事

総統選の野党統一候補をめぐる協議は決裂、各自が立候補する展開に
総統選の野党統一候補をめぐる協議は決裂、各自が立候補する展開に

今回の出典台湾yahooニュース”藍白郭會談不歡而散 柯、侯上午將先後登記參選總統”へのリンクはこちらから

◆今回の出典は:台湾yahoo!ニュースより

記者侯俐安、林縉明、鄭媁/台北報導

2023年11月24日 週五 上午7:01

<解説>

さて、ここまで三回にわたり、台湾総統選立候補届の締め切りを前にした野党側の統一候補調整をめぐる記事を取り上げてきましたが、今回で一区切りです。

・・・まるで、子供のケンカのような結末となってしまったようです。

こういう赤裸々な会見というのは、日本人から見たら「ええっ!」と思ってしまう方も多いのではないかと思うのですが、でも台湾ではけっこうよくあることです。

文化というか、国民の気質として台湾人はダイレクトなのです。

また、メディアが政治に対する監視を常に行っていますので、うわべの言い逃れができないため、こういう結末が起こってくることはよくあります。

逆に見れば、日本は政治に関しては特に、記者会見だろうとあらかじめ筋書きが決められてしまっていて、メディアも政権に忖度しています。

メディアが権力を監視するという意味での本来のジャーナリズムをしっかりと持っているならば、こうした展開はむしろ当然起こってもくるのではないかと筆者は考えます。

もちろん、「気質」は台湾の場合、日本人と比べてかなり激しいものがあるのは確かで、日本の参議院にあたる国民会議の議場で、言い争いが殴り合いになったりすることも過去には実際起こっているという、主張の激しさがあるのが台湾です。

総統選に話を戻しますが、野党が話し合いによって統一候補を立てて与党民進党に対峙する、というプランは破局を迎え、野党はバラバラのまま総統選に突入する事態となりました。

この後、国民党と鴻海の郭台銘さんは、対中政策としては協調路線を掲げていくと思われますが、柯文哲さんは玉虫色なので今後の政策をまたどう変えてくるかは注目で、与党に近い路線に軌道修正するかもしれません。

しかし、ここまで醜態をさらけ出してしまうと、国民党・民衆党いずれも失速の懸念はあり、民進党が史上初となる三期連続の政権維持を成し遂げる公算は高くなってきています。

しかし、民進党だけで支持率は過半数はないというのが現状ですから、対中政策に関してもある程度の妥協が求められてくるのではないかとも思われます。

台湾の動向は、中国の外交とも関わってくるので日本にも影響が出てきます。

総統選まであと二カ月を切り、今後の見通しが注目されます。

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記事と大意訳

セクション1

◎藍白郭會談不歡而散 柯、侯上午將先後登記參選總統

總統大選登記今天下午五時截止。藍白郭三方會談昨天下午登場,歷經一小時十八分不歡而散。民眾黨總統參選人柯文哲競辦宣布,柯今天上午十一時登記參選正副總統。國民黨今天上午十一時也將舉行中常會,公布國民黨總統參選人侯友宜副手人選,侯將在十一時四十五分到中選會登記參選。

<語彙注釈>

不歡而散Bù huān ér sàn=物別れに終わる 歷經Lìjīng=経過する 中常會Zhōng chánghuì=中央常務委員会 

<大意訳>

(記事タイトル)

◎国民党・民衆党の会談は物別れに終わる 柯文哲と侯友宜は今日の午前、順番に総統選への立候補届を出す模様

総統選の立候補届け出は本日の午後5時に締め切られる。国民党・民衆党・郭台銘の三者会談は昨日午後に始まり、1時間18分を経過して物別れに終わった。民衆党総統候補・柯文哲の選挙事務所は、柯文哲は本日午前11時に正副総統候補の届け出をすると宣言した。国民党は本日11時に党の中央常務委員会を開き、国民党総統候補・侯友宜の副総統を選任して発表し、侯友宜は11時45分に中央選挙管理委員会で立候補届け出を行う見通し。


セクション2

◆三方會談過程曲折 火藥味濃

昨天這場在台北市君悅飯店進行的藍白郭三方會談,從上午聯繫到下午會面,過程曲折,會面氣氛也火藥味十足。準備場地的鴻海創辦人郭台銘,在飯店廿五樓備好套房,欲與侯友宜、柯文哲密室會談,但國民黨盼「開大門走大路」,對會面方式僵持許久,最後在飯店一樓公開進行。

郭、柯、侯三人與前總統馬英九、國民黨主席朱立倫在媒體前公開協商,結果沒有共識。國民黨隨後回中央黨部開記者會,重申「等柯到最後一刻」;但昨晚柯營先發出採訪通知,預告今早十一時,柯將偕副手登記參選,侯營昨晚隨後也發出採通,今早十一點四十五分登記參選。


<語彙注釈>

曲折Qūzhé=紆余曲折 火藥味Huǒyàowèi=一触即発 君悅飯店Jūn yuè fàndiàn=グランド ハイアット ホテル 套房Tàofáng=スイートルーム 盼Pàn=希望する 僵持許久Jiāngchí xǔjiǔ=長いこと膠着状態に陥る 協商Xiéshāng=交渉 採訪通知Cǎifǎng tōngzhī=記者会見の布告 偕Xié=いっしょに

<大意訳>

◆三者会談は紆余曲折し、一触即発のムードが漂う

昨日、台北市のグランドハイアットホテルにて行われた国民党・民衆党・郭台銘の三者会談においては、午前から午後をまたいで会談が行われたが、紆余曲折し、会談のムードは一触即発の雰囲気に満ちていた。この場を準備した鴻海創業者の郭台銘は、ホテルの25階にスイートルームを手配し、侯友宜、柯文哲との密室会談を望んだが、国民党は「公衆の面前で正々堂々と」と希望、会談の方式をめぐり長いこと折り合いがつかず、最終的にはホテルの一階にて公開で会談が行われることになった。

郭、柯、侯の三人と、前総統・馬英九および国民党主席・朱立倫がメディアを前にして交渉を行ったが、結果は共通認識に至らなかった。国民党はその後記者会見を開き、「柯文哲を最後の一瞬まで待つ」と繰り返した。しかし柯文哲陣営は昨夜記者会見の予告を出し、今日の午前11時に柯文哲は副総統候補と共に立候補の届け出を行うとし、侯友宜陣営も昨夜会談後に記者会見の予告を出して今日の午前11時45分に立候補の届け出を行うという。


セクション3

◆郭一度指馬朱是「不速之客」

郭台銘、柯文哲、侯友宜、馬英九、朱立倫昨天傍晚齊聚台北君悅飯店。郭台銘先喊話,原本侯講好只有三人會談,「侯友宜請我來做東」,三方各帶一名幕僚,未料馬、朱也到場。郭還一度指馬、朱是「不速之客」,場面尷尬。

對於侯友宜要求會談公開、透明,郭台銘說,三方會談要有私密性,但保證一定全程錄影,媒體可以連線,並請馬、朱到其他房間休息。郭還一度打斷原本要先發言的侯友宜,堅持指定朱立倫先回答,是以何種立場與會。朱強調他的出席,代表支持在野合作聯盟會議。輪到馬發言時,馬直接喊:「我是見證人原則上不發言」,全程馬即未再發言。

<語彙注釈>

不速之客Bùsùzhīkè=招かれざる客 傍晚齊聚Bàngwǎn qí jù=夕方に集まる 做東Zuò dōng=ホスト役を務める 幕僚Mùliáo=幹部 未料馬Wèi liào mǎ=想定外の大物 尷尬Gāngà=恥ずかしい、気まずい 打斷Dǎ duàn=割り込む  

<大意訳>

◆郭台銘は馬英九、朱立倫を「招かれざる客」と一度は名指し

郭台銘、柯文哲、侯友宜、馬英九、朱立倫は昨日の夕方台北のグランドハイアットホテルに集まった。まず先に郭台銘が、もともとは侯友宜が三人だけで会談しようと言ったのであり、「侯友宜が私にホストを務めてくれと依頼した」のだと声を上げた。三者はそれぞれ一人の幹部を連れていたが、想定外の大物、朱立倫まで現れた。郭台銘は一度は馬英九、朱立倫を「招かれざる客だ」と名指しし、会場はしらけた。

侯友宜が会談を公開しクリアなものにしたいと言ったことに対して郭台銘は、三者会談は親密に行われることが重要だが、全部のやり取りを録画することを約束するし、メディアは有線を通じて見れることとし、ならびに馬英九、朱立倫には別の部屋で休んでいてもらおうと主張。郭台銘は更にもともと最初に話すことになっていた侯友宜が話を始めた際に(最初に朱立倫に事の経緯を説明してもらう、と侯友宜が言い出したことに対して)、朱立倫にまず話を先にするよう指名するというならば、いったい君はどういう立場でこの会場に来ているのだ、と一度話に割り込んだ。朱立倫は自分が出席するのは、野党連立の連盟会議の代表としてであることを強調。馬英九は自分の発言の順番になった際、「私は立会人であるから、原則上、発言しない」とじかに声を張り上げた。そして馬英九はそのまま最後まで発言しなかった。

  

セクション4

◆侯念柯簡訊 稱郭要理由退選

侯友宜則還原過去四十八小時三方溝通過程,並指馬英九是三方邀約而來。隨後,侯友宜在徵得柯文哲同意後,公開念出柯傳給侯的簡訊:「如果credit要給郭董,直接在他家也可以,不然找一個飯店都可以」,「他需要找一個理由退選,所以給他面子也是好的,但是太多人在看,要祕密見面有困難,需要公開見面」,侯補充說明,「他」指的是郭台銘。侯念出柯簡訊內容後,柯、郭臉色大變。柯文哲隨後表示,雖然他同意,但侯把私人簡訊拿出來念,「這種是只有名嘴跟側翼才會做的事情」。侯友宜反駁:「事前有徵得您同意」,柯文哲怒回:「不要打斷我。」

侯、柯昨還針對先前民調解讀有番爭辯;中場休息後,郭辦發言人黃士修宣布,該場地只借到昨晚七時,六時卅分就要撤場,並表示站在郭的立場,不希望藍白執著在民調爭議上,「如同郭台銘也不會要求朱立倫檢視今年五月份的十幾份民調」。

<語彙注釈>

簡訊Jiǎnxùn=ショートメール 徵得Zhǐ dé=許可を得る 名嘴跟側翼Míng zuǐ gēn cèyì
=講演者と聴衆 反駁Fǎnbó=反論する 怒回Nù huí=怒ってこたえる 有徵得Yǒu zhǐ dé=誘ったことがある 有番爭辯Yǒu fān zhēngbiàn=言い争いがあった 撤場Chè chǎng=会場を退出 如同…也=…さえも同じく 

<大意訳>

◆侯友宜は、「郭台銘には選挙から撤退する理由が必要だ」とする柯文哲からのSMSを読み上げる

侯友宜は過去48時間の三者のやり取りの経緯を改めてたどるとともに、馬英九は三者から招かれてこの場に来たことを指摘。その後、侯友宜は柯文哲に同意許可を得た上で柯文哲が侯友宜に寄越したSMSを公衆の面前で読み上げた。「もし、郭会長に信用を与えるためならば、直接彼の自宅に行くこともいとわない、そうでなければどこかのホテルでもいい」「彼には選挙から降りる理由を探す必要がある、なので彼の顔を立てるのが得策だ。しかし多くの人が観察しているから、こっそり会うのは難しい。会談を公開しないとだめだろう」。侯友宜は補足説明として「彼」とは郭台銘のことだ、と名指しした。侯友宜が柯文哲のSMS内容を読み上げた後、柯文哲と郭台銘の顔色は一変した。柯文哲はその後、自分は同意はしたが、侯友宜が私的なSMSを持ち出して読み上げたことについて、「こんなやりかたは、まるでアナウンサーが聴衆に語るように、一方的なやり方以外のなんだというのだ」と言い出し、侯友宜は「事前にあなたの同意は得ているじゃないか」と反論。柯文哲は怒って「私がしゃべっているのに余計な口出しをするな」と言い返した。

侯、柯はさらに先の世論調査の解釈についても言い争った。途中休憩後、郭台銘のスポークスマン黃士修が、この会場が借りれるのは夜7時までです、6時30分にはご退場くださいとアナウンス、ならびに郭台銘の置かれた立場から、国民党・民衆党が世論調査をめぐって争うことは望まず、「郭台銘と同じように、朱立倫には、今年五月の十数項目にわたる世論調査の検証を求めるべきでない」と発言した。


セクション5

◆「民調說」激怒朱 偕侯馬離場

此話一出,朱立倫立即大聲打斷黃,直稱「千萬不要侮辱五月份的民調」,那三份參考民調,每一份都是真實的,絕對禁得起考驗,用汙衊方式,絕對不是大家願意見到的。語畢,朱立倫即與侯友宜、馬英九一同起身離場。郭台銘則感慨三方會談變成「無言的結局」。

<語彙注釈>

侮辱Wǔrǔ=侮辱する 絕對禁得起考驗Juéduì jīndéqǐ kǎoyàn 汙衊Wūmiè=中傷 語畢Yǔ bì=話し終えて 感慨Gǎnkǎi=肩を落とす 無言的結局=無言の結末

<大意訳>

◆「世論調査発言」に朱立倫は激怒、侯・馬と共に会場を立ち去る

この話が出るや、朱立倫はすぐに黃の話を遮り、「五月の世論調査をバカにするな!」、あの三項目は世論調査を参考にしており、どれをとっても事実じゃないか、改めて世論を試すなどもってのほかで、まるで中傷のようなやり口だ、そういうことをみんなが望むとでもいうのか、と。話し終えるとすぐに、朱立倫は侯友宜、馬英九を引き連れて会場を後にした。これを見ていた郭台銘は、三者会談は「意味のない結末」になってしまった、とため息をついた。


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