台湾セメントは「低炭素セメント業界の主導」を目指す!欧州の炭素国境課税を目前にひかえ、トルコやポルトガルのセメント企業に大幅増資

 今回の題材

出典先:擴大布局低碳水泥市場!台泥宣布斥資266億元內擴大增持土耳其、葡萄牙水泥廠股持股より
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<大意訳 全文>

(タイトル)

◎低炭素セメント市場への布石拡大!台湾セメントはトルコとポルトガルのセメントメーカーの株式保有を266億台湾元の投資範囲内で拡大すると宣言

台湾セメントは、(27日)深夜、トルコのOYAKグループとの提携を発表、トルコのOYAKセメントとの合弁子会社の持ち株比率を40%から60%に増やすとともにポルトガルのCimporセメントとの合弁子会社の持ち株比率を40%から100%に増やし、予想される投資額は台湾元で266億元規模となる見通しである。2024年最初のシーズンにおいて交易の計画をまとめ、これにより欧州・アジア・アフリカの低炭素セメント市場へ投資拡大する。

台湾セメント広報担当の葉毓君は、この度の投資拡大はOYAKセメントおよびCimporセメントが低炭素セメントの研究開発と生産技術を世界的に主導することに焦点を置いている、と述べた。

彼女は台湾セメント会長の張安平に代わっての発言として、低炭素は未来の国際化市場であり、台湾セメントはOYAKセメントとCimporセメントへの増資を通じて、最も低炭素のセメントを提供する数少ないサプライヤーとなることを目指す、と発言。

台湾セメントはまた、この先、EUが炭素国境税CBAMを実施に移した後、EU圏内生産であろうと輸入であろうとセメントについては、低炭素であることが欧州市場での競争力を発揮する、とも述べている。

OYAKはトルコ国内に7か所のセメント工場、11か所のクリンカー生産ライン、2か所の白色セメント生産ライン、67か所のコンクリート工場、50か所の配送ターミナルおよび港湾も一か所保有する。このところ積極的に代替燃料や代替クリンカーを使用する技術を発展させてきており、トルコ国内のAslan工場では発熱量置換率は61%の高水準であり、化石燃料の実質削減を十分に実現している。

台湾セメントとOYAKが共同保有しているポルトガルのセメント会社Cimporは、アフリカのカメルーンにおいて世界で唯一無二のバイオマス燃料を90%使用する商業用セメント量産工場を建設している。Cimporのコートジボアールセメント工場では世界最大規模の焼成粘土生産基地を建設、焼成粘土とクリンカーを混交させるならば、従来のセメントよりも40%以上、二酸化炭素排出量は削減される。

台湾セメントの発表によれば、この度の持ち株拡大案は2024年最初のシーズンが終わる前に実施完了し、台湾セメントの役員会が承認する金額は台湾元で約266億元の範囲内となり、国際的に知名度の高い投資銀行であるシティグループがこれに関連したコンサルティング業務を行うとのことである。


<解説>

まずは、語学学習者の方に。

中国語では国名や人名などの固有名詞に、けっこう「ええっ!」というような漢字による当て字が使われます。

ここでもトルコとかポルトガルとか、漢字で表記されると、最初はなんのことだかわかりません。

それはもう、慣れていくしかありません。

また、経済記事については、なんとなくわかるものもあると思いますが、用語が漢字でも日本と意味が違ったりするものもありますから、これも慣れていくしかありませんが、毎日いろいろなものに接していくならば、じきに中文の新聞は読めるようになりますので、ぜひこういう記事もお役立てください。

さて内容に関して。

「低炭素セメント」とは、セメントを作る際に化石燃料の使用を削減したセメントのことです。

セメントに化石燃料なんて使われてるの??と思うかもしれませんが、セメントを作るためには、先に「クリンカー(焼塊)」という元となるものを作らねばならず、これは材料のエーライト、ビーライトといった物質を1500度の高温で焼かねばならないそうです。

この工程で、かなりの化石燃料が消費されています。

そこで、このクリンカーの材料に、火力発電で発生するフライアッシュや高炉水砕フラグといった産業廃棄物を使用することで、セメント製造にかかわる二酸化炭素発生量を大幅に抑えたのが、「低炭素セメント」と呼ばれるものです。

セメントは建設材料としては欠かせないものですが、欧州では2026年からこのセメントに関しても「炭素国境課税」を実施することになっていて、将来的には従来のセメントは欧州では使えなくなる見込みです。

台湾企業の台湾セメントが、この度、トルコとポルトガルのセメント会社に大規模投資を行い、低炭素セメントの市場を主導する計画を立てている、というのがこの記事にあることです。

それも間に欧米を代表する投資銀行であるシティグループが入ってですから、かなりの国際戦略的な出資なのでしょう。

台湾はこういう産業基盤に欠くことのできない「素材」に特化するのが得意です。

半導体などもハイテク品に特化してやってきていますし、国連からは認知されず、中国とも微妙な関係にある小国であるがゆえに、産業構築の視点は面白いところに着目し、成功している分野も多いです。

日本はEUの炭素国境課税に対してはどんな手を打ってきているのでしょうか?

報道を目にしないので、なんだか心配です。

台湾元は価値が下がった円に比べてこの10年でも価値は上がってきていますから、台湾はこういう海外投資を今後も積極的に行っていくのでしょう。

TSMCが熊本に工場建設というのも、今では日本で生産する方が安く作れる、という試算があるからです。

それだけ日本は今、売るものがだんだんとなくなっていて、「お買い得な」国になってしまったのですね・・・。

こういう記事を読むと、かつていろいろと海外で買収を仕掛けていたころの日本の景気の良さがなんだか懐かしいです・・・。

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原文からの引用・語彙注釈・大意訳

◆今回の出典:台湾yahoo:財經中心

2023年11月28日 週二 上午1:33

セクション1

◎擴大布局低碳水泥市場!台泥宣布斥資266億元內擴大增持土耳其、葡萄牙水泥廠股持股

台泥昨(27)天深夜宣布攜手土耳其OYAK集團,擬在約266億元台幣額度內,將土耳其OYAK水泥合資子公司持股由40%提高為60%,並將葡萄牙Cimpor水泥合資子公司持股從40%增至100%,預計2024年第1季前完成交易程序,藉此擴大投資歐亞非低碳水泥市場。

<語彙注釈>

低碳水泥Dī tàn shuǐní=低炭素セメント:産業廃棄物を有効利用することで二酸化炭素排出量を大幅に削減できるセメント 土耳其Tǔ'ěrqí=トルコ 葡萄牙Pútáoyá=ポルトガル 斥資Chìzī=投資する 持股Chí gǔ=株式保有する 攜手Xiéshǒu=提携する 擬Nǐ=予想される 合資子公司Hézī zǐ gōngsī=合弁子会社 程序Chéngxù=プログラム 藉此Jí cǐ=これにより 

<大意訳>

(タイトル)

◎低炭素セメント市場への布石拡大!台湾セメントはトルコとポルトガルのセメントメーカーの株式保有を266億台湾元の投資範囲内で拡大すると宣言

台湾セメントは、(27日)深夜、トルコのOYAKグループとの提携を発表、トルコのOYAKセメントとの合弁子会社の持ち株比率を40%から60%に増やすとともにポルトガルのCimporセメントとの合弁子会社の持ち株比率を40%から100%に増やし、予想される投資額は台湾元で266億元規模となる見通しである。2024年最初のシーズンにおいて交易の計画をまとめ、これにより欧州・アジア・アフリカの低炭素セメント市場へ投資拡大する。


セクション2

台泥發言人葉毓君Yèyùjūn表示,此次擴大投資主要著眼於OYAK水泥以及Cimpor水泥領先全球的低碳水泥研發與生產技術。

她轉述台泥董事長張安平Zhāng ānpíng表示,低碳是未來的國際化市場,台泥透過增加投資OYAK水泥與Cimpor水泥,可望成為全球少數能提供最低碳水泥的主要供應商。

<語彙注釈>

著眼於Zhuóyǎn yú=焦点を当てる 轉述Zhuǎnshù=言い換える 供應商Gōngyìng shāng=サプライヤー 

<大意訳>

台湾セメント広報担当の葉毓君は、この度の投資拡大はOYAKセメントおよびCimporセメントが低炭素セメントの研究開発と生産技術を世界的に主導することに焦点を置いている、と述べた。

彼女は台湾セメント会長の張安平に代わっての発言として、低炭素は未来の国際化市場であり、台湾セメントはOYAKセメントとCimporセメントへの増資を通じて、最も低炭素のセメントを提供する数少ないサプライヤーとなることを目指す、と発言。


セクション3

台泥也表示,未來歐盟實施碳邊境稅CBAM後,無論本地或進口水泥,低碳都將在歐洲市場發揮競爭力。

OYAK在土耳其境內有7座水泥廠,11條熟料產線、2條白水泥產線、67座混凝土廠、50個發貨站以及1個港口,近年來積極發展替代燃料與替代熟料使用技術,位於土國境內的Aslan廠熱值替代率更高達61%,充分落實減少使用化石燃料。

<語彙注釈>

碳邊境稅Tàn biānjìng shuì=炭素国境税:環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける欧州連合(EU)の新たな仕組み。26年から課税 熟料產線Shú liào chǎn xiàn=クリンカー生産ライン 白水泥Bái shuǐní=白色セメント 混凝土Hùnníngtǔ=コンクリート 熱值替代率Rè zhí tìdài lǜ=発熱量置換率

<大意訳>

台湾セメントはまた、この先、EUが炭素国境税CBAMを実施に移した後、EU圏内生産であろうと輸入であろうとセメントについては、低炭素であることが欧州市場での競争力を発揮する、とも述べている。

OYAKはトルコ国内に7か所のセメント工場、11か所のクリンカー生産ライン、2か所の白色セメント生産ライン、67か所のコンクリート工場、50か所の配送ターミナルおよび港湾も一か所保有する。このところ積極的に代替燃料や代替クリンカーを使用する技術を発展させてきており、トルコ国内のAslan工場では発熱量置換率は61%の高水準であり、化石燃料の実質削減を十分に実現している。


セクション4

台泥與OYAK共同持有的葡萄牙水泥公司Cimpor,在非洲喀麥隆建有全世界唯二使用90%生質燃料商業化量產水泥廠,Cimpor在象牙海岸的水泥廠則建有世界第一套大規模生產鍛燒黏土水泥基地,鍛燒黏土混合熟料後,較傳統水泥減少至少40%碳排。

台泥表示,此次擴大持股案目標於2024年第一季結束前完成,台泥董事會授權金額為新台幣約266億元內。國際知名投資銀行花旗提供相關顧問服務。

<語彙注釈>

喀麥隆Kāmàilóng=カメルーン 唯二Wéi èr=ただ一つの 生質燃料Shēng zhí ránliào=バイオマス燃料 象牙海岸Xiàngyá hǎi'àn=象牙海岸:コートジボアール 套Tào=セットを表す量詞 鍛燒黏土Duàn shāo niántǔ=焼成粘土 授權Shòuquán=承認する 花旗Huāqí=シティグループ

<大意訳>

台湾セメントとOYAKが共同保有しているポルトガルのセメント会社Cimporは、アフリカのカメルーンにおいて世界で唯一無二のバイオマス燃料を90%使用する商業用セメント量産工場を建設している。Cimporのコートジボアールセメント工場では世界最大規模の焼成粘土生産基地を建設、焼成粘土とクリンカーを混交させるならば、従来のセメントよりも40%以上、二酸化炭素排出量は削減される。

台湾セメントの発表によれば、この度の持ち株拡大案は2024年最初のシーズンが終わる前に実施完了し、台湾セメントの役員会が承認する金額は台湾元で約266億元の範囲内となり、国際的に知名度の高い投資銀行であるシティグループがこれに関連したコンサルティング業務を行うとのことである。


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