進まない野党統一候補調整 台湾総統選挙の立候補届け出は締め切り間近

 今回の題材記事

今回は、台湾総統選挙の野党統一候補調整は佳境に差し掛かり、前回の経緯に関するその後の報道を題材にします。

◆今回の出典:

記者侯俐安、林縉明、鄭媁、程遠述、李文德、黃于凡/連線報導

2023年11月23日 週四 上午7:24

原典記事「登記倒數…侯等柯1句話 郭曝與侯柯聯繫約見面」から
原典記事「登記倒數…侯等柯1句話 郭曝與侯柯聯繫約見面」から

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<解説>

台湾総統選挙は、立候補届け出の締め切りが間近に迫ってきました。

野党側は、三つ巴では民進党の頼清徳さんに及ばないので、統一候補を立てて連立する道を模索しているのですが、立候補の届け出が迫っても調整のめどがつかず紛糾しています。

立候補届け出は明日11/24までで、立候補にあたっては総統候補のみならず副総統候補も立てねばなりません。

誰を総統候補にし、誰が副総統候補に回るか、という問題で国民党と民衆党は折り合いがつかず、物別れのままに終わる可能性も出てきています。

記事の中で「世論調査」が出て来ますが、国民党と民衆党の連立協議においては、最新の世論調査の結果を反映して、侯友宜さんと柯文哲さんのどちらが総統候補でどちらが副総統候補となるかを決めよう、ということになっていました。

しかし、世論調査の分析評価をめぐり対立が続いていてまとまりません。

台湾の国民性としては、「謝らない」「我を主張する」というのは基本です(笑)ので、どちらも相手の後塵を拝したくない、というのは当然なのです。

しかし、現実認識を欠いているのか、それとも状況を分かったうえでの高度な駆け引きなのかはわかりませんが、ギリギリになった今も国民党と民衆党の歩み寄りは見られません。

無所属候補として出馬表明している郭台銘さんも、この状況では対中政策で協調路線を主張している三人とも撃沈することが予想されるため、調整に乗り出しています。

さすがに鴻海の会長、現実認識には長けています。

が、国民党の侯友宜さんと民衆党の柯文哲さんのいずれも譲る様子はなく、この段階になっても調整がつく見通しはありません。

もっとも、立候補届け出を出した後でも、退くことはできます。

しかし国民党・民衆党のいずれかが、紛糾している相手を副総統として届け出をする、という意味では期限は目前です。

連立を実現するには、いずれかが譲歩する必要があります。

誰が退くか?のチキンレースは佳境に入っています。

が、誰も下りないならば・・・四人の総統候補が選挙を争うという展開になるでしょう。

権力への執着は世界中どこを見ても同じです。

しかし、こういう状況では、果たして連立が成立したとしても、政権を取った場合にうまく機能するのでしょうか・・・?

「野合(やごう)」という言葉がありますが、日本でも政権奪取だけが目的での野合はうまくいかなかった過去があります。

政権をまだ奪取したわけでもないのにマウントを取り合うこうした構図は、野党勢力への支持基盤を逆に弱めることにもなっていくのではないでしょうか。

それにしても、総統を全有権者が選ぶという方式は、誰が候補者として出るにせよ国民に選ぶ権利があるわけで、制度としては日本の議院内閣制度よりも優れた面はあると思います。

日本では、国民が選べるのは政党のみで、誰が首相になるかについては国民に決定権はないのですから・・・。

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記事と大意訳

◆今回の出典:

記者侯俐安、林縉明、鄭媁、程遠述、李文德、黃于凡/連線報導

2023年11月23日 週四 上午7:24

セクション1

◎登記倒數…侯等柯1句話 郭曝與侯柯聯繫約見面

二○二四總統、副總統參選人登記倒數計時,民眾黨總統參選人柯文哲、鴻海創辦人郭台銘昨天分別請人領表,在野整合瀕臨破局。柯文哲昨重申「要推最強組合」,國民黨總統參選人侯友宜再喊話「團結在野力量,我會等到最後一刻。」郭台銘昨兩度邀約侯友宜、柯文哲會面談合作,因侯另有行程,未能成行。

<語彙注釈>

登記倒數Dēngjì dàoshǔ=立候補届け出カウントダウン 曝Pù=暴露する 約見面=会う約束をする 參選人Cān xuǎn rén=候補者 領表=(立候補の)届け出用紙 瀕臨Bīnlín=瀕している 喊話Hǎnhuà=声をあげる 邀約Yāoyuē=招待する 

<大意訳>

(記事タイトル)

◎立候補届け出カウントダウン・・・侯友宜は柯文哲が決断するのを待つ意向 郭台銘は侯友宜と柯文哲の連携に立ち会う約束をしたことを公表

2024年の総統・副総統選挙立候補届け出はカウントダウンが始まり、民衆党総統候補者の柯文哲と鴻海創業者の郭台銘は、昨日それぞれ届け出用紙を取りに行かせた。野党一本化は破局の危機に瀕している。柯文哲は昨日、「最も強い組合せを進める必要がある」と繰り返し、国民党総統候補者の侯友宜は「野党のパワーを結集するため、私は最後まで待つ」と声を張り上げた。郭台銘は昨日二度にわたり侯友宜、柯文哲の連立交渉を三人で進めようと持ち掛けたが、侯友宜は別の予定があり、実現はしなかった。

セクション2

◆登記明截止 3人昨晚未見

距離明日登記截止,時間迫在眉睫,但藍、白、郭在野整合仍然談不攏。郭台銘昨傍晚在臉書公布與侯、柯通話紀錄,指侯友宜前天晚上致電郭,稱郭是他和柯的老大,是最有聲望和能力做整合的桶箍,希望郭見證主持促成「藍白郭」三方會面合作。

依該通話紀錄,郭台銘昨早約侯、柯八點到他家見面,侯原本同意,但侯柯後來都表示,等藍白民調紛爭解決後,三人再公開見面進行整合,柯對郭說:「我和侯兩個拜託你不要登記了,你當公親。」柯隨後上午十時到郭家,柯同意三人有必要在昨天之內見面,郭也贊同。

媒體原以為三人昨晚會見面,不過,侯昨傍晚在台南表示,未接獲通知,不知道時間、地點,在這種狀況下他「靜候」,未來若有機會,都希望以公開、透明的方式,往前一起。

柯辦發言人戴于文說,沒有特別安排會面規畫,若侯陣營仍糾結在民調細節的討論,將繞回原點,使三方會面淪為空談。

郭台銘、柯文哲昨下午分別由郭副手賴佩霞Làipèixiá、柯競選總幹事黃珊珊Huángshānshān

代至中選會領表;至於登記參選,只剩今明最後兩天。

<語彙注釈>

迫在眉睫Pòzàiméijié=差し迫る 談不攏Tán bù lǒng=同意できない 傍晚Bàngwǎn=夕方 桶箍Tǒng gū=桶のタガを締める 見證Jiànzhèng=立ち会う 民調紛爭Mín diào fēnzhēng=世論調査に関する見解の違い 公親Gōng qīn=義理の父親 陣營Zhènyíng 糾結Jiūjié=もつれる 繞回原點Rào huí yuán diǎn=原点回帰 淪Lún=滅びる 剩shèng=残る

<大意訳>

◆届け出は明日で締め切りだが、三人は昨夜もいまだに話し合いを行わず

明日で立候補届け出は締め切られ、時間は差し迫っているが、国民党・民衆党・郭台銘による野党勢力統合は以前として同意に至っていない。郭台銘は昨日の夕方、フェイスブックで侯友宜、柯文哲との通話記録を公表、侯友宜が前の晩、郭台銘に電話してきて、郭台銘を侯友宜、柯文哲の上司である、と持ち上げ、その声望と能力を持って桶のタガを締めて候補者統一をまとめてほしい、郭台銘が中心となり国民党・民衆党・郭台銘の三つの勢力をまとめるのに立ち会ってほしい、と言ったことを指摘。

この通話記録をもとに、郭台銘は昨日の朝8時、侯、柯両氏と自宅で会見する約束をし、侯友宜はもともとは同意していた。しかし侯も柯も後から、国民党と民衆党の世論調査をめぐる争いが解決したら、そのとき改めて三人で会見を公開し連立の話を進めよう、と言い出した。柯が郭に言ったことには、「私と侯友宜は二人ともあなたに立候補の届け出をしてほしくないのだ。だってあなたは義理の父親だから」。柯はそのあと午前10時に郭台銘の自宅に現れ、柯は三人が昨日のうちに会って話し合う必要があることに同意したので、郭台銘もそれに賛同。

メディアももともと、三人が昨晩会って話し合うだろうと予測していた。しかしながら侯友宜は昨日の夕方、台南で、そんな連絡は受け取っていない、時間も場所も知らないといい、この期に及んで彼は「静観」し、この先もし機会があるならば、会見は公開し、クリアな方式で一緒にやろう、と表明。

柯文哲事務所のスポークスマン戴于文は、特に三人で会う予定は設けておらず、侯友宜サイドがもし依然として世論調査の細部話し合いでごねるようであるならば、話はふりだしに戻ってしまい、三者会談は消え失せると発言。

郭台銘、柯文哲は昨日の午後、それぞれ郭の副責任者である賴佩霞、柯の選挙総幹事である黃珊珊をして、中央選挙管理委員会へと届け出用紙をもらいに行かせた。届け出て選挙に出るにあたっては、今日明日二日間しか時間的猶予は残されていない。

セクション3

◆藍白仍為民調問題交鋒

藍白雙方昨仍為民調問題隔空喊話,黃珊珊婉拒公開檢視九份民調,強調科學就是科學,同樣數據重新檢視不會有不同結果,只是把彼此的爭執點放大在媒體前。

侯競辦發言人黃子哲說,藍白合作六點共識,國民黨是放棄政黨實力比較,才使柯同意若雙方誤差範圍內,採計「侯柯配」得點,但九份民調有三份從「擱置」變「排除」,爭議未解,希望回歸六點聲明,讓科學說話,籲柯找回初心。

<語彙注釈>

交鋒Jiāofēng=対立する 隔空喊話Gé kōng hǎnhuà=遠くで叫ぶ 婉拒Wǎnjù=婉曲に断る 彼此Bǐcǐ=互いの 擱置Gēzhì=保留する 籲Yù=うったえる

<大意訳>

◆国民党・民衆党は依然として世論調査問題をめぐり争う

国民党・民衆党双方は、昨日の段階でもいまだに世論調査問題をめぐり、隔たりが大きく言い合いをしている。黃珊珊は九項目の世論調査に関する検討作業内容を公開することを穏やかに拒否し、科学は科学であり、データは改めて検討したとしても異なることはないと強調、これにより双方の確執点をメディアの前にさらけ出してしまった。

侯友宜の選挙事務所スポークスマン黃子哲は、国民党・民衆党連立にあたっては六つ点においての共通認識があるが、国民党が政党の実力で両者を比較することを放棄しなければ、双方の誤差範囲内で柯文哲を同意させることは難しい状況であるとし、「侯友宜が総統、柯文哲が副総統」のプランにはメリットがあるが、しかし九項目の世論調査のうち三項目が「保留」から「排除」に変わってしまったため、争いは解決せず、柯文哲に対しては六つの共通認識の声明に立ち戻ることを切望するとし、科学的に話し合い、初心に立ち返ってほしいと訴えかけた。

セクション4

◆柯重申推最強勝選組合

柯文哲昨受訪重申,既然要合作,就是要推最強勝選組合,並稱美國方面也問他,但他告訴對方,「台灣是一個充滿驚奇的島嶼,還有兩天的時間,不要緊張」。黃珊珊昨深夜在臉書貼文:「柯文哲將以台灣民眾黨總統候選人身分拚戰到底,這句話應該很清楚!」她更在留言區問道:「有人看不懂嗎?」

侯友宜喊話,「最後一哩路是否要走完,還是要看柯文哲的一念之間」,如果走完民調,就很清楚誰正誰副,大家一起照著六點聲明往下走,就可團結所有在野力量,「柯文哲要不要,就是一句話」,他會等到最後一刻。

<語彙注釈>

既然=であるからには 島嶼Dǎoyǔ=島々 拚戰Pàn zhàn=必死で戦う 問道=訊ねる 

<大意訳>

◆柯文哲は選挙に勝てる最強の組み合わせを推し進めたいと繰り返す

柯文哲は昨日取材を受けて繰り返し、連立するというなら、選挙に勝てる最強の組み合わせを推し進めるだけであると発言。またアメリカも彼にどうなるのかを質問してきているが、彼はこれに対し「台湾はサプライズに満ちた島ですからね、まだ二日も時間がありますから、慌てなくてもいいのです」と答えたと語った。黃珊珊は昨日の深夜、フェイスブックに投稿、「柯文哲は台湾民衆党の総統候補として最後まで戦い抜く、と。そのほうがはるかにすっきりする!」。彼女はコメント欄でもこう問いかける。「みんなわかってるよね?」。

侯友宜は強調する。「最後の1マイルを完走できるか否かは、やはり柯文哲の一存にかかってくるだろう」。もし世論調査の件を乗り切れば、おのずと誰が総統で誰が副総統であるかははっきりするだろう。皆が六つの共通認識声明に沿って走り出せば、野党全てのパワーを結集させることができる。「柯文哲はどうするのか?これにすべてかかっている」。彼は最後の瞬間まで待ち続けるだろう。


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