台湾タピオカミルクティは、もう時代遅れ?台湾資本ドリンクチェーンは中国企業との競争に勝てず中国市場からどんどん撤退

今回の題材

 

出典先:陸手搖飲廝殺激烈 台式奶茶玩不過「連環倒」より
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<解説>

今回のキーワード「手搖飲料(スゥオヤオインリャオ)」は、元々は台湾でそこら中にあるドリンクスタンドのことです。

日本では、「台湾タピオカミルクティー」のイメージがありますが、これはもともとは台湾の街なかどこでも見かける屋台風のドリンクスタンドで、「マンゴー牛乳」などとともにどこでも売っている形式の飲料でした。

台湾は気候が暑いのでこういうドリンクスタンドはいたるところにあり、件数は多くても需要はあります。

もう一つの理由としては台湾では水道水は塩素剤を使わないためボツリヌス菌がいます。

原則煮沸しないと飲めないのです。

なので飲む水は沸かすか、買うかが普通ですので、それでこうしたドリンクスタンドが「文化」として発達してきたという面があります。

この手のドリンクスタンドは客が注文すると、ジューサーで作った果汁ジュースや、氷、紅茶や緑茶、牛乳などをミックスして「シェイク」して、プラスチックのカップに入れるのですが、このカップの上をフィルムでパウチし、客に渡します。

もちろん、タピオカミルクティーもありますけれど、通常の台湾人はレモン紅茶、アイスコーヒー、レモン緑茶などをたのむことが多く、タピオカミルクティー「珍珠奶茶Zhēnzhū nǎichá」は甘すぎるので敬遠されることもしばしばです。

砂糖も受注してから入れるので、砂糖抜きでたのむこともできます。

客は太いストローをぐっさりと刺してこれを飲みます。

「手搖飲料」といえば、こういうイメージです。

台湾のドリンクスタンド記事より
台湾のドリンクスタンド記事より

写真のウェブサイトはこちら

日本でも、台湾の「Qickly」チェーンが最近では大阪や東京などでチェーン展開しているようですが、こうしたドリンクスタンドチェーンは少し前から中国にも進出しています。

一時は急成長、中にはあっという間に中国で1000店舗を超える店を構えた「一點點(イーディエンディエン)」のような台湾ブランドもありました。

が、同じ形態のドリンク店が「あっ!!」という間に乱立し、競合が激しい飽和状態に陥り、台湾ブランドは相次ぐ撤退や売却でどんどん中国では姿を消していっています。

日本でも一時「Qickly」などは「タピオカミルクティー」で売れていましたけど、これもすぐに競合が激化して、今では一時ほどブームではなくなってしまっています。

中国はいまだに人口が16億ですから、こういうチェーン店を展開する企業にとっては進出して当たれば莫大な利益が得られます。

しかし、こういう飲み物だと、中国企業はすぐにノウハウを真似て同じ路線でやりだしますから、ヒットしてもすぐに競合が激化してうまくいかなくなってしまいます。

でも記事の主眼は、「むしろ台湾企業のほうが殿様商売的でイノベーションやメニューの更新に不熱心で、中国でのトレンドに対応できない」という厳しいものです。

それだけ中国は競争も激しいですから、中国人経営者たちはトレンド追及に敏感だということです。資本主義であるはずの台湾企業があっという間に追いつき追い越されてしまうわけです。

考えてみれば、中国が今やiphoneでもFMVでも、ほとんどの中身は作っているわけで、その開発速度は恐ろしく早いのですから、ビジネス感覚がそれだけシビアで仕事も早いのです。

中国のそうしたビジネスへの貪欲さは、日本も台湾も見習わねばならぬ時代なのかもしれませんね・・・。


<大意訳 全文>

(タイトル)

◎中国ではドリンクスタンドの競合熾烈 台湾式ミルクティーは競争に勝てず「グループチェーンを放棄」

かつて台湾のドリンクスタンドは中国では非常に儲かっていたが、現在ではいくつもの有名ブランドが次第に撤退している。中国本土のブランドに競争で勝てないばかりか、イノベーションにおいても考え方が古いことは致命的となりつつある。

洗練された雰囲気のドリンク店では、店員が一杯一杯の新しいドリンクを入れるのに大忙しである。ゴーヤ、コリアンダー、トマト、牛乳、究極の味わいを追及しているが価格は安いものではない。記者が手にする「ハーブレモンティー」は、目の前で店員が新鮮なハーブをジューサーにかけて、一杯85台湾元である。もう一杯は「田舎風食物繊維たっぷりのスイートポテト、コーン、ココナッツ、ヨーグルトのドリンク」と呼ばれるもので、カップの中はあっというまにゼリー状に固まっている。競争が激化している大陸中国のドリンク市場においてはいかにお客の記憶に残るかが最大のポイントとなっている。

中国のドリンクブランドは百家争鳴状態で、一軒の商業施設に二十数件のドリンク店がひしめいている。なかにはずっとお客が一時間以上も並んで待つ店もある。しかし台湾資本のブランドだけが取り残されたように存在感がまったくない。記者は北京の人たちにインタビューしてみた。「(台湾式ミルクティーを)普段買うことあるかって?ちょっとあんまり買わないなあ。だってよく買ってるのは茶百道とか喜茶(中国のブランド)だよ。どちらかといえばそっちのほうが飲み口はいいんじゃないか」。

台湾の(ドリンクチェーン)「五十嵐」は、中国でのブランド名は「一點點」で、かつては市場でナンバーワンだったのだが、この二年ほどですでに千店舗を撤退、もう一つの台湾ブランド「快樂檸檬」は、現在残っているのは246店舗のみ、親会社はさらに中国事業の株式の70%を手放し、アメリカ市場の開拓へと路線を変更している。中国のドリンク原料サプライヤーである鄭權Zhèng quánさんに話を聞いた。「一點點とか、快樂檸檬とかいったとこは、実際のところ彼ら自身に問題があってさ、やっぱり商品のラインナップ更新がほとんどされてなくて、しかも対応が遅かったんだよね。だって今、この業界では、ドリンク自体の根本的な飲み口の良しあしに(セールスポイントが)戻ってきているから、全体的にメニューの最適化がされている最中さ」。

一點點のメニューにある紫米と芋の団子は、季節により材料が変わってしまうようなメニューで、改良がほぼなされない以上、ライバルと競争してみようもない。(中国と台湾の)共同プロモーションではなおのこと中国本土のブランドには太刀打ちできず、マーケティングにおいても将来性は見いだせない。台湾式ドリンク店の草分けたちは熾烈に戦いを挑みながら(中国市場に)進出をしてきたが、次々と敗れ去っている。記者は北京の人たちにインタビューしてみた。「(台湾ブランドの飲み物を、いまでも選ぶことってあります?)ええ、ありますよ。(理由を聞かせてください)だって、とてもおいしいですよ。(コストパフォーマンスは割高じゃないんですか?)いや、こんなもんでしょう。」

(ドリンクだから)割と安いのでお客はまだ買ってくれるのだろうが、中国ブランドが資本増強して圧倒的に勢力を拡大する中で、台湾資本のドリンク店は古い考え方のまま、ともすれば市場から一掃されてしまうかもしれない。

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原文引用・語彙注釈・大意訳

今回の出典先:台湾Yahoo!:東森新聞

2023年12月10日 週日 下午7:00

セクション1

◎陸手搖飲廝殺激烈 台式奶茶玩不過「連環倒」

過去台灣手搖引在大陸曾經很強,但現在幾個知名品牌緩步退場,除了玩不過大陸本土品牌,在創新上思維老化也成為致命傷。

<語彙注釈>

廝殺Sīshā=殺し合い、ここでは競合 玩不過Wán bùguò=競争ができない 連環倒Liánhuán dào=連鎖倒産、共倒れ、続々撤退 緩步退場Huǎn bù tuìchǎng=ゆっくりと撤退 創新chuàngxīn=イノベーション 

<大意訳>

(タイトル)

◎中国ではドリンクスタンドの競合熾烈 台湾式ミルクティーは競争に勝てず「グループチェーンを放棄」

かつて台湾のドリンクスタンドは中国では非常に儲かっていたが、現在ではいくつもの有名ブランドが次第に撤退している。中国本土のブランドに競争で勝てないばかりか、イノベーションにおいても考え方が古いことは致命的となりつつある。


セクション2

酷炫風格的茶飲店,店員忙著調製一杯杯新式茶飲,苦瓜香菜番茄撞奶,挑戰味蕾極限但價格不菲。記者手上這杯「香菜檸檬茶」,是標榜手工現搗新鮮香菜,一杯要價台幣85元,而另一杯叫做「田園纖膳烤蜜薯玉米椰酸奶杯」,整杯幾乎快成為固體,在競爭激烈的大陸手搖飲市場,要如何讓消費者有記憶點,成為最大關鍵。

<語彙注釈>

酷炫風格Kù xuàn fēnggé=クールなスタイル 苦瓜香菜番茄撞奶Kǔguā xiāngcài fānqié zhuàng nǎi=ゴーヤ、コリアンダー、トマト、牛乳 味蕾極限Wèilěi jíxiàn=最大に味覚を刺激する味わい 價格不菲Jiàgé bù fěi=価格は安いものではない 標榜Biāobǎng=見せびらかす 現搗Xiàn dǎo=ジューサーにかけたばかり 叫做Jiàozuò=呼ばれる 纖膳Xiān shàn=食物繊維 烤蜜薯Kǎo mì shǔ=焼き芋 玉米椰酸奶Yùmǐ yē suānnǎi=コーン・ココナッツ・ヨーグルト 關鍵Guānjiàn=キーポイント

<大意訳>

洗練された雰囲気のドリンク店では、店員が一杯一杯の新しいドリンクを入れるのに大忙しである。ゴーヤ、コリアンダー、トマト、牛乳、究極の味わいを追及しているが価格は安いものではない。記者が手にする「ハーブレモンティー」は、目の前で店員が新鮮なハーブをジューサーにかけて、一杯85台湾元である。もう一杯は「田舎風食物繊維たっぷりのスイートポテト、コーン、ココナッツ、ヨーグルトのドリンク」と呼ばれるもので、カップの中はあっというまにゼリー状に固まっている。競争が激化している大陸中国のドリンク市場においてはいかにお客の記憶に残るかが最大のポイントとなっている。


セクション3

中國茶飲品牌百家爭鳴,一家商場就有二十幾間不同茶飲店,有些甚至永遠得排隊等上一個小時,但唯獨台資品牌幾乎沒有存在感。記者vs.北京民眾:「(台式奶茶)平常還會購買嗎?,比較少一些,因為比較多買的是茶百道或喜茶,偏向於就是可能口感更好的吧。」

<語彙注釈>

百家爭鳴Bǎijiāzhēngmíng=百家争鳴状態 唯獨Wéi dú=…だけが 偏向於Piānxiàng yú=どちらかといえば

<大意訳>

中国のドリンクブランドは百家争鳴状態で、一軒の商業施設に二十数件のドリンク店がひしめいている。なかにはずっとお客が一時間以上も並んで待つ店もある。しかし台湾資本のブランドだけが取り残されたように存在感がまったくない。記者は北京の人たちにインタビューしてみた。「(台湾式ミルクティーを)普段買うことあるかって?ちょっとあんまり買わないなあ。だってよく買ってるのは茶百道とか喜茶(中国のブランド)だよ。どちらかといえばそっちのほうが飲み口はいいんじゃないか」。


セクション4

台灣的「五十嵐」在中國代理名為「一點點」,曾經稱霸市場,但近兩年已經收掉一千家門市,另外一家「快樂檸檬」,現在只剩246家,母公司更已將中國業務的70%股權出售,要轉向拓展美國市場。大陸茶飲原料供應商鄭權Zhèng quán:「像一點點、快樂檸檬這種的,其實他們的問題,還是在於更新可能稍微有點慢了,而且大家現在其實也回歸到了,原本的飲品口感本身,在優化整體的菜單。」

<語彙注釈>

稱霸Chēngbà=制覇する 收掉Shōu diào=撤退する 股權出售Gǔquán chūshòu=株式売却 拓展Tàzhǎn=開拓する 優化Yōuhuà=最適化 

<大意訳>

台湾の(ドリンクチェーン)「五十嵐」は、中国でのブランド名は「一點點」で、かつては市場でナンバーワンだったのだが、この二年ほどですでに千店舗を撤退、もう一つの台湾ブランド「快樂檸檬」は、現在残っているのは246店舗のみ、親会社はさらに中国事業の株式の70%を手放し、アメリカ市場の開拓へと路線を変更している。中国のドリンク原料サプライヤーである鄭權Zhèng quánさんに話を聞いた。「一點點とか、快樂檸檬とかいったとこは、実際のところ彼ら自身に問題があってさ、やっぱり商品のラインナップ更新がほとんどされてなくて、しかも対応が遅かったんだよね。だって今、この業界では、ドリンク自体の根本的な飲み口の良しあしに(セールスポイントが)戻ってきているから、全体的にメニューの最適化がされている最中さ」。


セクション5

一點點菜單上的紫米芋圓,是季節性更動的配料菜單,創新不足無法與對手競爭,聯名宣傳更玩不過本土品牌,行銷毫無能見度,初代台式茶飲在激烈攻勢下,節節敗退。記者vs.北京民眾:「(台灣品牌你們現在還是會去選擇嗎?),會,(為什麼?),因為挺好喝的啊,(那算性價比高嗎?),也還好吧。」

因為相對便宜消費者還是會買單,但當中國品牌在資本加持下,鋪天蓋地擴大版圖,台資茶飲思維老化,也恐將面臨市場淘汰。(封面圖/東森新聞)

<語彙注釈>

紫米芋圓Zǐ mǐ yù yuán=紫米と芋の団子 配料Pèiliào=材料 聯名宣傳Liánmíng xuānchuán=共同プロモーション 行銷毫無能見度Xíngxiāo háo wú néngjiàndù=マーケッティングに将来性を見いだせない 節節敗退Jié jié bàituì=だんだんと撤退 算性價比Suàn xìngjiàbǐ=コストパフォーマンス 鋪天蓋地Pūtiāngàidì=圧倒的に 

<大意訳>

一點點のメニューにある紫米と芋の団子は、季節により材料が変わってしまうようなメニューで、改良がほぼなされない以上、ライバルと競争してみようもない。(中国と台湾の)共同プロモーションではなおのこと中国本土のブランドには太刀打ちできず、マーケティングにおいても将来性は見いだせない。台湾式ドリンク店の草分けたちは熾烈に戦いを挑みながら(中国市場に)進出をしてきたが、次々と敗れ去っている。記者は北京の人たちにインタビューしてみた。「(台湾ブランドの飲み物を、いまでも選ぶことってあります?)ええ、ありますよ。(理由を聞かせてください)だって、とてもおいしいですよ。(コストパフォーマンスは割高じゃないんですか?)いや、こんなもんでしょう。」

(ドリンクだから)割と安いのでお客はまだ買ってくれるのだろうが、中国ブランドが資本増強して圧倒的に勢力を拡大する中で、台湾資本のドリンク店は古い考え方のまま、ともすれば市場から一掃されてしまうかもしれない。


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